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美容室 経営 求人|求人難の理由と対策

「美容室経営の求人難の理由」について解説します。その課題を踏まえた上で、今後、転職の市場はどうなっていくか、どんな環境、条件を準備し、その情報をどう伝えていけばいいのかについてもお話します。

美容室経営における求人難の現状は皆さんご存知の通りです。これはしばらく続きます。改善されるかどうかは不透明で、むしろ厳しくなる可能性があります。今回とある方と、なぜこんなに求人難なのかを一緒に考え、その議論をしました。その中で上がってきた一つのデータ。昔から見ていたデータですが、早く見ていればもっと早く対応できたのにと思うものがあり、それを紹介します。

求人難である理由とは?

待遇の良い会社

求人難の理由はいくつかあります。分かりやすい例として、美容室の待遇が良くなったことが考えられます。私が美容師になった頃は、社会保険の存在すら知らず、給料も10万円程度で残業も普通、休日もほとんどない時代でした。しかし、現在は週休2日が当たり前で、8時間勤務、残業手当の支給、有給も取得可能な状態になっています。新卒の給与の水準も20万以上になり、土日の休みも取れるようになってきています。労務環境の整備が進んだことで離職者が減り、業界全体の離職率も下がっているのではないでしょうか?

シェアサロン

もう1つの理由はシェアサロンの増加です。以前は売上が100万円くらいないとシェアサロンに行かない、あるいは行ってもうまくいかない状況でしたが、最近では30万〜40万円の売上でもシェアサロンを選ぶ方が増えています。これはシェアサロンの企業努力と改善の成果も影響しています。

先日、許可を取って元スタッフが働いているシェアサロンに訪問し、内部の仕組みを見学しました。シェアサロンには1人で美容師をする上で必要な設備やシステムが整っています。例えば、ネット予約システムやカルテ管理ソフトなども契約すれば全て利用できます。これらのツールが非常に充実しています。通常のサロンよりも、むしろ1人でやるには良い環境が整っています。

中でのスタッフ同士の交流や情報交換もあるそうで、シェアサロンに行ってから、先にフリーランスとしてされている方に教えてもらいながら売り上げを立てていくと。

少ない売上でもシェアサロンで踏ん張ることができれば、そこで売上を上げる道も確立されています。このため、シェアサロンを選ぶ人が増えてきたことが、2つ目の大きな理由だと思います。

美容学校の卒業生の推移

3つ目は、確定的な理由です。これは想像ではなく、数字で明らかになっているところがあります。それは美容学生の卒業人数です。みなさんもぜひ、美容学校卒業生の人数の推移を、文部科学省などが出している情報を見てください。

2017年以降、急激に減っています。私の時は2万人以上の卒業生がいて、2017年より前も少しずつ下がり気味で、約1万6000人でした。その後、2017年以降はさらに減少し、2020年には1万4000人台まで下がっています。コロナの年にはさらに減少しました。

2022年頃に美容学校の入学数は少し復活傾向にあります。今後また増えていくかもしれませんが、2017年から2022年の卒業生は、前の6年と比べて約2000人少ないです。

2017年からの6年で卒業した方々は2024年現在デビューしたてから20代後半の世代、今の中途採用市場の中心にいます。

昨年末から今年にかけて中途の求人市場が動かなくなったと感じる方も多いと思うのですが、シェアサロンの増加や待遇改善による離職率の低下と美容学生の卒業生が少なかった世代が中心になると、さまざまな状況が重なり、求人市場に大きな影響が出ています。

今後気をつけなければならないのは、美容学生の卒業生が減っているというデータを見て、将来どうなるのかを想像し、どのような対策をとるべきかを考えることです。

人口の推移と似ていますが、今回は反省しました。ただ数字を見て「減っている、やばい」と思うだけではなく、しっかりと対策を考える必要があります。今後も注視し、5年前、6年前から対策を打てるようにすることが重要です。絶対に見ておかなければならないデータだと感じます。

今後の美容業界

そういう状況を踏まえ、今後どうしていくべきかを解説して行きます。

待遇は必須

待遇面の改善は必須です。現在の利益でこれ以上は給料を出せないという計算の仕方ではなく、一定の労働時間を守りつつ、高い給料を出し、社員で雇用するならば社会保険もつける。それを実現するためにはどうすれば良いかを考える必要があります。

社会保険をつけたら利益がなくなるという状況なら、やり方を根本から変えるしかありません。もはや待遇を議論している場合ではなく、整った待遇は絶対条件ですので。

さらに整っている事は今後スタートラインに立てる条件でしかなく、待遇での勝負はできなくなります。給料の割合も限界があります。社会保険の提供、労働時間も法律遵守ラインが基本となり、それ以上はありません。全てのサロンが限界値まで待遇を整えたところで、どこかで止まります

企業としての生き様

では、そこからどうなるかというと、まさに企業の生き様が問われます。どういう考えで事業に取り組んでいるのか、どのような人が活躍しているのか、そしてその人たちがどのような思いに共感しているのかが重要です。

基本的にはトップの生き様が会社全体に影響します。トップの行動や考え方が全てを左右するのです。そのため、今日明日の利益ではなく、何のために仕事をしているのか、何を提供し、どのような価値を作っているのかを明確に言語化し、それを発信する必要があります。

店舗展開も考える必要あり

店舗展開も今後は慎重に考えないと痛い目に合います。勢いで店舗を広げるのは非常に危険です。現在、獲得できていた中途採用の美容師が少なくなっているため、無作為に店舗を展開すると失敗する可能性があります。

以前は良い物件が見つかれば抑え、その後求人を募集するという方法が良かったですが、今後はまず人材が集まり、キャパシティオーバーになってから店舗を展開するという方法に戻す必要があります。

新卒採用育成は必須

新卒採用と育成も今後は重要度が増していきます。

直近の課題で行くと今のスタッフさんい高い水準のお給料を今すぐ準備し、待遇面を良くしなければならないため、マンツーマンでの対応や業務委託に切り替えるお店が増えてきています。さらに、新卒採用にはコストがかかり、人件費を上げられないという理由で新卒採用をやめる動きもありますが、この対策は長期的に見るとやるべき対策と逆行している側面があります。

教育体制を持つサロンは育成の仕組みやカリキュラムが整っているため、これから強い立ち位置になる流れになっていて。新卒採用をやめる決断は避けるべきです。これは私の感覚もありますが、おそらく新卒採用をやめる決断はマイナスに働きます。

新卒採用をしながらも高い給料水準を維持するためには、これまでのビジネスモデル自体が合わないため、根本からやり直す必要があります。

一人美容室+別事業

このように考えると、開業や独立する人にとって、1人美容室の需要は今後さらに伸びていくでしょう。スタッフを雇用する形だと、人を集めるのが非常に難しくなり、リスクが高くなります。一方で、1人でやる場合、その最大の問題や難しさがなくなり、関係がありません。1人美容室はやりやすくなります。

最近、1人美容室の形も変わってきています。以前は、自分が動けなくなったら終わりという問題がありましたが、今ではSNSや発信の力によって、1人美容室の情報が非常に価値を持つようになっています。マンツーマンで運営しているお店も多く、情報を求めるニーズも非常に高い。そのため、1人美容室を運営しながら、再現性のあるノウハウを販売する形がオーソドックスになっていきます。

スタッフの将来について考えると、1人で独立したいという人に対してのフランチャイズや独立支援の具体的な仕組み、本部機能の提供も必要になるなと考えています。

求人対策

スタッフの属性を絞り込む

今後も求人を取っていくためには、スタッフの属性についてよく考える必要があります。集客と同様に、飽和状態になると尖った発信や1人に指した情報発信でないと見つけてもらえず、価値が薄くなります。幅広くいくタイミングではありません。

自社のスタッフで伸びている人や長く勤めている人の属性を明確に分析すべきで、どういう媒体から入ってきたのか、美容学校の特徴、学生時代の過ごし方、修行時代の1社目や2社目の経験が個人美容室なのか、大型美容室なのか、などを詳しく調べます。

こうした属性の分析を通じて、長く残り、成長するスタッフの特徴を明らかにし、そのターゲットに向けた求人活動を行うことが重要です。

入り口を増やす

良い環境を作り、その属性にマッチする素晴らしい環境ができたとしても、知ってもらえないと意味がありません。知ってもらわなけらば応募にはつながらない。ですが、以前に比べて求人情報を届けるのが非常に難しくなっています。その理由として、SNSの発達により求人媒体だけで情報収集する人が減っていることや、多くの会社が様々な媒体やコンテンツで自社の情報を発信し、その精度が上がっていることがあります。

自社の情報を様々なプラットフォームで発信し、多様なコンテンツを用意することが重要です。具体的には、求人媒体のみでなく、SNSやブログ、動画配信などを活用し、求職者にリーチする手段を増やすことが必要です。

ツールを使いこなす

情報発信の精度が上がってきて見つけてもらうのが困難になっている今。各種デジタルツールを活用することが非常に重要な位置になりました。

例えば、Instagramのサポートや分析ツール、公式LINEを運用するLステップなどがあります。これらのツールをしっかり使いこなすべきで、投資を惜しむべきではありません。

たくさんのツールが出ているので、どれが良いのか分からない部分もあります。そこで、良さそうなツールは一旦使ってみて、課金して試し、選別していく必要があります。

その入り口の精度を高めるためにツールを使いこなし、さらに入ってきた人に届ける情報も工夫する上でも各ツールを使って行く必要があります。

ホームページやSNS、LP(ランディングページ)も持つだけでは不十分です。ABテストを細かく行い、トップの画像などの要素を比較し、どちらが次に読む確率が高いか等を分析し改善していかなくてはならない。ここには、ヒートマップといったツールがあります。

まとめ

そんな感じで非常に厳しい状況ではありますが、今日お伝えしたかったのは、美容学校の卒業生や入学生の推移に注目し、その5年後や6年後の状況を予測することが重要だということです。この作業をぜひ取り入れていただきたいと思います。

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