美容室開業を考えている美容師さんに向けて、お店を探す際の物件の広さについて、一人で店舗を持つ場合、スタッフを雇用する場合に分け、セット面の数別にどれぐらい必要なのかという点を細かいところまで含めてお話しします。
美容室の許可が降りる最低
美容室を設立する際には保険上の検査を通過しなければならず、この保健所の検査をクリアするためにはある程度の広さが必要です。実は、広さの基準が存在し、これは自治体によって異なることがあるので、まずは最初に確認していただきたいです。
最低限必要とされているのは13平方メートルと言われています。13平方メートルとは、約4坪で、これを畳数で言うと約7畳ぐらいです。6畳の部屋よりは少し広いくらいです。この広さがあれば、保健所の検査を通過することができるとされています。しかし、待合スペースも確保しなければ、保健所の検査には通りませんので、実際には4坪の空間だと現実的に営業をしていくには少し狭い可能性があります。
一人美容室の場合に必要な広さの目安
一人オーナーで美容室を開業する場合、セット面1つ、シャンプー台1つで運営するとしても、最低でも6坪から7坪は必要です。7坪の広さがあれば、運営は可能ですが、色々な問題が出てくる可能性がありますので、余裕を持って運営を考えるならば、理想的には10坪以上はあった方が何かとやりやすくなります。
4坪から7坪だとバックルームがなく、トイレを設置する場合にも問題が生じます。
しかし、ビル内に入っており共用のトイレを使用できる場合などでは、7坪程度でも可能かもしれませんが、一人での美容室の運営には、やはり10坪ぐらいはあった方が良いと思います。一人で美容室を運営する場合、15坪から20坪の広さは必ずしも必要ではありません。
家賃も考慮すると、固定費が少なければ広めの部屋を借りることも問題ないですが、基本的には、広くなるほど家賃が高くなります。
特に一人でのサロン運営では家賃等の固定費の負担は重くなります。そのため、広すぎる物件は避けるのが基本です。
広さを考える際に気をつけなければならないのは、単に坪だからといって、そのままセット面が何面入るわけではないということです。重要なのは物件の形状です。例えば、正方形や長方形のような四角い物件は、狭くても割とセット面が配置できます。
しかし、一部が斜めになっている、または円形などの変わった形状の物件の場合は、同じ広さでもセット面の数が減少します。もう一つ重要なのは、どれぐらいの幅があるかという点です。
例えば、壁と壁の両面に鏡を置く場合、約4.5メートルの幅が必要です。これは通路を考慮した場合のサイズで、通路を考慮しなければ4メートルあれば配置可能です。
しかし、幅が3.5メートルだと2面に鏡を置くとかなり窮屈な感じになります。したがって、長方形の物件が4メートルと3.5メートルでは、配置できるセット面の数が大きく変わります。
そのため、広さはあくまでも目安であり、物件の形状や寸法によって大きく変わるため、実際に行って正確に測ることが推奨されます。ホームセンターで販売されているレーザー測定器は、今後開業を計画している方にとって必須のアイテムですので一つ購入しておくことをおすすめします。
一番面積の必要ない方法
最も効率的に最小限の面積で運営する方法は、タカラベルモントさんの商品であるスイングタイプのシャンプー台を使用すれば、セット面とシャンプースペースを一つのスペースで済ませることができます。このタイプのシャンプー台は、通常のものと比較して価格は高めですが、限られた面積で運営を行うことが可能になるため、ランニングコストの節約につながります。
数年間で考えれば、最小限の広さでスイングタイプのシャンプー台を使用することの金銭的なメリットは、広い場所を借り続けるよりも大きくなるでしょう。
セット面の横幅
セット面とセット面の間や作業範囲の広さどのくらい必要なのか、通常と個室の場合に分けて解説いたします。
通常の場合
セット面の横幅については、壁がある場合、その壁までの長さは通常約90cm(専門用語では900と言います)を確保すると、カット時に周囲を回り込むのに問題ありません。80cmだと少し狭いですが、それ以下になるとかなり厳しいです。
たまに、内装屋さんのミスで壁に直接鏡を取り付けてしまう店もありますが、これでは回り込むことができず、実質的に使用できない「幻のセット面」となってしまいます。これは絶対に避けるべきです。
嘘のような話ですが、実際にあった事例ですので工事の前の打ち合わせ段階で必ずご確認ください。
椅子から椅子までの間隔については、鏡の中心から私たちの場合、約1.4m(1400mm)のスペースを設けています。これは個室でない場合の設定で、この間隔は広すぎず狭すぎず、ちょうど良い感じになります。
しかし、もし一人で美容室を運営し、仮に2面を設置する場合でも、作業するのは自分一人なので、隣の人が気まずくならなければ、この1400mmにこだわる必要はありません。より狭いスペースでも問題なく運営が可能です。
個室の場合
個室にすると状況が少し変わります。椅子と椅子が並んでいて壁がない場合、間の作業スペースは共有できる部分ですが、個室にするとそれぞれのセット面にそれぞれの作業スペースが必要になります。
先ほどお話したように、鏡の中心から壁までの距離は概ね90cm必要です。したがって、個室の場合は両方に90cmずつ、合計で180cmの横幅が必要になります。個室タイプや半個室タイプでは、同じ広さでもセット面の数が1つか2つ減ってしまう可能性があります。
したがって、セット面の数を1つ減らして個室を設けるべきか、それともセット面の数を確保するべきかという判断が変わってきます。1つのセット面が増えれば、毎月100万単位の売り上げが変わる可能性があります。この差は大きなインパクトがあり、年単位で考えるとかなりの収益差になります。
コロナウイルスの影響がまだ完全には過ぎ去っていない現在、個室の需要がどれぐらいあるかを考えることは重要です。自分が考える売り、つまりコンセプトとして個室があった方が良いのか、それともなくてもあまり変わらないのか、固定費等との最大売り上げ、収支の差、この点をよく考慮するべきでしょう。
対面セット面の注意
両面のセット面、つまり裏表に鏡があるタイプを使う場合、一見すると壁と壁にセット面を配置するよりも、対面式の2面のセット面を置いた方が多くのセット面が配置できるように思えますが、実はその逆です。
壁と壁にセット面を配置する方が、実際にはより多くのセット面を設けることができます。その理由は、お客様の動線が必要となる場合があるからです。壁と壁の配置では、お客様の視線が中心の通路を共有する形になりますが、対面型の配置ではセット面の後ろにも通路が必要となり、実質的に通路スペースが2倍必要になります。
通常、1つの通路を考えるときには80cm程度が必要ですが、それが2倍、つまり160cmプラス作業スペースが必要となるわけです。
ただし、この両面のセット面が2台だけ並んでおり、その中心部分だけで視線が足りる場合は、後ろにそこまで多くのスペースは必要としません。その場合、4mの幅で対応可能です。しかし、このセット面の後ろを通過する必要がある場合は、現実的には5mほどの幅が必要になるでしょう。このような配置の違いにより、実際にどれだけのセット面を配置できるかは大きく変わってきますので、設計する際にはこれらの点を考慮する必要があります。
弊社の例
弊社の例をお話しすると、私たちの店舗で一番狭いところは17坪で、このスペースに個室で6席のセット面とシャンプー台3席が入っています。ただし、受付カウンターは設けておらず、セット面で会計を行う形式を取っています。17坪だと6セット面と3シャンプー台を配置するのはなかなか難しいので、この受付カウンターなしのモデルをぜひ参考にしてみてください。
また、別の店舗は10席で、30坪の物件にセット面10個とシャンプー台3つを配置しています。これは1店舗目に作ったお店で、ここは個室ではなく、オープンスペースです。ただ、この物件の形状があまり良くなく、少し歪んでいます。
本来30坪あれば、10席以上を確保できると考えても大丈夫です。実際、13セット面とシャンプー台4つ同じ広さで確保されているお店様もありますし、形状ややり方によっては、それ以上のセット面を配置できる可能性もあります。
その他の注意
広さを考える際に重要なのは、スタッフを雇用するかどうかも大きな要因です。スタッフを雇用する場合は、お客様を対応するスペースだけでなく、スタッフが休憩できるバックルームも必要で広さや設備も働くお店を決める大きなポイントになります。バックルームが狭すぎると、見学に来た際の印象が悪くなったり、採用活動にも悪影響を与える可能性がありますので、ある程度広さを確保することが望ましいと考えます。
一方で、一人で運営する場合は、自分が食事をとれれば良いため、休憩室なしで運営している店もあります。食事は外で済ませる、またはお客様がいない間に店内で済ませるという選択をしている方もいます。
まとめ
美容室の開業、広さはどの程度必要なのか。という事に関しての情報を紹介してきました。現実的には、最低でも4坪から美容室が可能ですが、実際には7坪以上から始めることをお勧めします。物件の形状によって、同じ広さでも収容できるセット面の数は変わる。作業スペースと通路を考える必要があり、対面式か壁付けかによっても必要な広さは変わってると。
個室を設ける場合も、シャンプー台やセット面の間隔を現在の店舗を基準にして考慮し、それを測定してみて、必要ならばより広いスペースを確保することが一番です。このように、様々な要因を考慮して適切な広さを決定することが重要です。
今後開業をお考えの方は、今現在のお店の寸法を計測してみて、それより広い方がいいのか、狭くていいのか考えてみるのが、一番イメージがつきやすいのでおすすめです。