美容室を開業するにはいくら必要なのか。その内訳や自己資金を貯める際の注意点を解説していきます。開業にかかる費用は規模感によって大きく変わるので一人で開業する場合、スタッフを雇用する場合、両方の側面から紹介いたします。独立をお考えの美容師さんはぜひ最後までご覧ください。
美容室開業資金の目安
開業資金についてですが、1人で運営する場合とスタッフを雇う場合では大きく異なります。また、立地や物件の契約内容、契約する広さによっても上限は大きく変わります。
今回紹介する内訳や金額は一つの目安として把握し参考にしていただけらばと思います。
一人美容室の場合
まず、1人で美容室を開業する場合、現実的な必要最低面積は約7坪から15坪の範囲です。この面積で美容室を1から構築すると、おおよそ700万円から1200万円が多いラインとなります。
スタッフを雇用する場合
スタッフを雇用する場合、雇う人数や何席で運営するかによって必要な資金は変わります。例えば、3席で運営するのか、それとも10席を設置するのかによって大きく異なりますが、目安としては1,300万円から2,000万円の間で抑えたいところです。初期投資については、現実的にはおよそ3,000万円で全てを賄い出店することが基本的であり現実的です。また、スタッフを雇う場合、店舗を構築し始動するまでの資金だけでなく、最初の赤字期間も考慮し、運転資金をしっかりと確保しておく必要があります。これらは1人で運営する場合と比べて大きく異なる点です。
開業資金の内訳
物件取得
敷金、礼金、保証金という初期費用が物件取得に必要です。敷金は一時的に預けるお金で、基本的には退去時に返金されます。礼金は物件の大家さんに支払う一度払ったら戻らないお金です。保証金は敷金と礼金の中間のような性質を持ち、契約条件によっては一部が返金される設定になっています。
1人で運営する場合、これらの初期費用はできれば100万円から200万円以内に抑えたいところです。1,00万円以下であればベストです。
スタッフを雇って規模を大きくすると、初期費用は200万円から300万円、人気の物件では500万円以上かかることもあります。
礼金と保証金の目安について、地域によって異なる部分がありますが、大阪の場合、家賃の半年分以内であれば妥当だと感じます。人気の物件では、家賃の1年分、つまり12ヶ月分の礼金や補助金が必要になることもありますが目安としては半年分を基準にしたいところです。
物件取得の際の初期費用は交渉次第で変わることがあります。例えば、交渉で家賃の保証期間を6ヶ月から3ヶ月に短縮するなどの提案が可能ですが、人気の物件では交渉の余地が少なく、すでに多くの申し込みがある場合は、その点を踏まえた上で判断する必要があります。たくさんの申し込みが入っている場合、交渉した時点で候補から外される事もあるので注意が必要です。物件の需要や他の申し込み状況については、不動産屋から情報をいただく形になるので、内覧と申し込みどのくらいきているのかを確認するようにして下さい。
内装費用
店の内装は集客だけでなく求人にも大きな影響を与え、事業の根幹を担う部分にもなってきます。さらに材料費等の高騰により、以前と比べて高くなってしまっていることも懸念材料ではあります。内装費用についてですが、1人でサロンを運営する場合でも、400万円から600万は見込んでおくべきです。
スタッフを雇用する場合、内装は採用に大きな影響を与えるため、安すぎる内装では後々問題が生じることがあります。このため、600万円から1200万円程度の予算を見積もることが現実的です。弊社の場合、30坪のテナントで出店する際には、少なくとも1000万円から1200万円以上の費用がかかります。
おすすめの方法は。最初は受付周りに集中して資金を投入し、その後サロンが軌道に乗ってから家具の追加や追加工事を行い、内装を完成させていく方法です。この段階的なアプローチにより、初期の投資を抑えつつ、必要に応じて質を高めることが可能です。
美容室の居抜き物件などで内外装をそのまま活用すれば、この費用はかからずオープンできるのでもし、そのような物件があれば、一気に開業費用を抑える事も可能です。
材料仕入れ
次に、材料の仕入れについてですが、1人で運営する場合は約50万円から100万円の費用が見込まれます。スタッフを雇用する場合は、100万円から200万円程度が相場になるでしょう。材料費に関しては、通常月末に支払うため、その時点で売上が入ってきていますので、開業費用に含めるかどうか絶妙な所ですが、念の為把握しておいて下さい。
機材備品
機材の購入についてですが、1人で運営する場合、シャンプー台やデジタルパーマ機械などの基本的な設備で、50万円から100万円ほどの費用がかかります。
スタッフを雇用し、より広い空間(20坪から30坪)でサロンを開設する場合は、設備投資が増えるため、200万円から300万円の費用が必要になることが予想されます。
これまでに説明した費用は、開業にかかるざっくりとした内訳ですが、さらに細かい費用も発生します。例えば、火災保険の支払いやインターネットの工事費用なども必要ですし、保健所の手続きをしたり、もし会社を設立してスタートするならその費用もかかります。今日お伝えした金額感を基に、実際の開業計画を進めていただければと思います。
運転資金
オープン日にお金がなくなっている状況は絶対に避けるべきです。内装費用などで全ての資金を使い果たしてしまい、オープン日に資金が残っていないと、予想外に顧客が来店しなかった場合、直ちに経営が困難になる恐れがあります。
運転資金は、赤字期間を乗り越えるために絶対に確保しておくべきで、たとえ1人で美容室を開業し、顧客が来店すると見込んでいても、最低でも100万円は残してスタートする事を強くおすすめします。スタッフを雇用する場合には、開業時に200万円以上の運転資金を確保しておくことが理想です。使わなければ、その資金は設備投資や広告費に再投資することが可能です。しかし、運転資金がなければ、予想通りに進まなかった際にオープンしてすぐ廃業という最悪の事態を招きかねません。この概念は常に頭に入れておいて下さい。
自己資金の目安
開業資金で融資を利用するのが一般的ですが、その際には、持っている自己資金の額が重要になります。
自己資金が0の状態での開業は基本的には困難です。金融機関から資金を借り入れる際にも、手元に全く資金がない状態では信用が得られず、貸し付けを受けることは難しくなります。
自己資金がゼロで開業するには店舗を持つ形ではなく、シェアサロン等で開業する選択になります。
自己資金の目安ですが、日本政策金融公庫のホームページ等には、10分の1と記載されていますが、あくまでも申し込みが可能なラインで融資が通る金額ではない。と考えるのが妥当です。
希望する金額のおよそ3分の1の自己資金を用意しておくと良いでしょう。たとえば、1,000万円の資金を借りたい場合、300万円ほどの自己資金として持っていると、貸し付けを受けやすくなります。
融資の審査は、事業計画や、経験、実績等を含む総合評価なので必ずしもこの金額が必要なわけではありませんが、融資に失敗するととんでもない悲劇が待っています。確実に通過する準備をしたいところです。
自己資金の準備には注意が必要です。金融機関はその資金の背景に計画性を重視します。開業を決定してから計画的に資金を貯める過程が通帳に記録されているかどうかが、評価の大きなポイントになります。
仮に融資申し込み直前に両親から支援してもらい、一時的に300万円を借りて資金を準備した場合、これは計画性がある自己資金とは評価されにくいです。また、「タンス預金」のように非公式な貯蓄方法では、金融機関による評価は期待できません。
長期的な計画を立てる場合、たとえば開業を5年後に設定しているなら、毎月少額(5,000円や10,000円)でも定期的に貯金をすることが重要です。これにより、長期間にわたる貯蓄の継続性が証明され、最終的に残りの100万円を半年で貯めるなどの行動も評価されやすくなります。このような積み重ねが、金融機関からの信用を得る上で非常に効果的です。
注意しなくてはならない事
信用情報
借入に際しては、信用情報を損なわないように注意することが非常に重要です。クレジットカードの支払い遅延や携帯電話料金の未払いは信用情報に傷がつきます。気付かないうちに発生した未払いも問題です。そのため、定期的に自分の信用情報がクリーンであるかを確認することをおすすめします。
日本では、信用情報機関(CICなど)にアクセスし、自分の信用情報を開示してもらうことができます。この情報には、過去約5年間の金融取引の履歴が記載されています。自分の信用情報を事前にチェックすることで、意図しない記録が残っていないか確認し、もし、残っているとすれば、計画をより具体的に考えたり、他の部分で補うなどの対策を立て、成功する可能性を高める事も可能です。
フリーランスの場合
フリーランスの方が確定申告で収入をほとんどゼロに近く申告ケースも少なくないと思うのですが、そのような申告を行うと、金融機関からの信用を失うリスクがあります。収入がないとされている状態で、どのように生活しているか、また借入時の返済能力はどうかという疑問が生じます。
このため、開業が近くなってきたらある程度、適切な収入申告を行い、信用情報を損なわないようにすることが重要です。
まとめ
今回は美容室開業資金について概要や内訳の解説をしてきました。状況によりかなりの変動がありますので一つの目安として参考にしていただければと思います。また創業融資を受ける際には、税理士さんや内装屋さんで、自社と契約してくれるなら無料でサポートします。というサービスを行っている業者様もありますので、そのようなところを探し相談してみるのもいい方法です。
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