今日のテーマは「美容室の立地について」です。地方か都市かという選択で悩んでいる方々へ、2店舗目や3店舗目の出店を考えている方々に向けて、参考になる情報をお伝えします。地方と都市、この二つの選択は美容室の経営において大きく影響します。多くの意見があり、地方が良いと考える方もいれば、都心が適しているとする方もいます。どちらの意見も一理ありますが、どう判断するかは非常に重要です。この点について、私なりの考え方をお話しします。
地方のメリット
まず、地方と都市それぞれのメリットについてお話しします。
固定費
地方に出店するメリットとしては、圧倒的に固定費が削減される点が挙げられます。特に家賃は、都心の半分や3分の1の金額でテナントを借りることが可能ですし、同じ金額であればより広い物件を選ぶこともできます。これは地方の大きなメリットです。
また、広告費用についても大きな違いがあります。たとえば、都心であればホットペッパーの最上位プランを選択すると、50万円以上、PRプランにすると70万円から80万円ほどかかりますが、バリュープランが上限の地域もあれば、同じプラチナプランでも価格が異なる地域もあります。
地方では広告費用が格段に低く抑えられるため、これは非常に大きなアドバンテージとなります。家賃と広告費で考えて50万の差がつくとすれば、売り上げベースで行くと1,00万円位の差がついてくるので同じ売り上げでも利益率っていうのは圧倒的に変わってきます。
競合数
もう一つの大きなメリットは競合の数です。競合が多いほど、広告のレベルも高まり、お客様を獲得するための競争が激しくなります。そのため、同じ広告レベルを維持しても、都心に比べて地方の方が勝ちやすい状況が生まれます。つまり、地方では集客のしやすさという点で顕著なメリットが存在します。
都心のメリット
都市におけるメリットは何があるのか
求人面
圧倒的なのは求人面です。実際、美容師の中には地方よりも都心で働きたいと考える人が多いです。また、地方で働いていても、将来的には都心でスタイリストとして活躍したいと望む方も少なくありません。このように、求人に関しては都心の方が圧倒的に有利であると言えます。
人口の流動性
都心のもう一つのメリットは、人口の流動性が高いことです。引っ越しや転勤で新たに来る方々が多いため、一定期間ごとに人口が入れ替わります。この人の流れは新規顧客を獲得する上で大きな利点となり得ます。確かに、競合のレベルを考慮すると複雑な計算が必要になる場合もありますが、高い人口流動性は、新規顧客を獲得しやすい環境を提供する大きなメリットです。
物件の数
また、物件の選択肢の豊富さも都心のメリットです。地方に行くほどテナントの数が減少し、ビルの高さも低くなるため、利用可能な部屋数も限られてきます。これに対して、都心では多種多様な物件が存在し、良い条件の物件に出会う機会が格段に増えます。つまり、より多くの選択肢から適した物件を見つけることができるのは、都心ならではの大きな利点と言えるでしょう。
何を基準に選択するべきか?
一人でやるか、スタッフを雇用するか
一人で運営するのか、スタッフを雇って運営するのかという点が重要です。一人で美容師として働く場合、地方の方がメリットがあります。その理由は、一人で上げる売り上げに限界があるため、固定費の負担が重くのしかかるからです。地方では固定費を抑えることが可能なので、求人の課題を考慮しなくても済みます。したがって、一人で営業する場合は、地方が圧倒的に有利です。
一方で、スタッフを雇いたいと考えている場合、特に中途採用を主に行いたいという場合には、都心が有利だと考えます。新卒採用を行わずに中途採用のみを行う場合、求職者が豊富にいる都心が選択肢として強く推奨されます。
特に注意が必要なのは都心から1時間以内で通える地方都市です。こうした地域では求人が難しくなる傾向がありますので、慎重に検討することが重要です。
理由としては、通勤時間が重要な要因になります。1時間以内であれば毎日の通勤は可能です。東京では1時間半の通勤も珍しくないため、その地域によって通勤時間の感覚が異なりますので一概に1時間と規定はできませんが、中央都市に通える地方は、求人が難しい「1番危険なゾーン」と言えます。
一方で、都心から1時間以上離れた地方になると、その地域に住む美容師さんが都心に通うという選択肢が少なくなるため、中途採用でも可能性が出てきます。この距離感であれば、中途採用の戦略も立てやすくなります。
今の勤務しているところはどこか?
開業を考える際に重要なのは、現在勤務している場所です。現在の勤務地の近くで開業するのが基本的な王道プランです。現在の会社との関係やルールによって可能不可能はありますが、自分がどのような発信をすれば、どれぐらいの顧客が来店するかを把握しやすくなります。
また、集客だけでなく求人においても、その地域の相場感を理解していることは大きなアドバンテージになります。したがって、現在勤務している場所が都市であれば都心での開業を考え、地方であればその近くでの出店が適していると考えられます。
もし現在の勤務地とは異なる場所で出店を考えている場合、特に地元に戻って開業したいという思いがあるなら、直接その地域での経験を積むことが非常に有効です。例えば、私は和歌山県出身で大阪に勤めているというパターンだったのですが、和歌山で出店する計画があるなら、いきなり大阪から和歌山に出店するのではなく、一度和歌山の美容室で勤めて市場の感覚を掴み、その後で独立する手順を踏むのがおすすめです。
現在の美容業界はどこも人材不足が問題となっていますので、独立を前提に1年間勤めるという条件を提示しても、採用してくれるサロンは多いはずです。
独立前の重要なステップとして、出店予定地域での経験と情報を掴む上で非常に有効です。
将来のビジョン
将来的なビジョンも立地選びの重要な基準の一つです。一店舗のみで終わる予定か、それとも複数店舗を展開するかによって、選ぶべき場所が変わってきます。特に、2店舗目を出す場合は、既存の店舗に近いエリアに出店する方が安全です。近くにあれば、緊急時に相互に支援が可能で、リソースや人材の共有もしやすくなります。
ただし、人口が少ない地域では、1店舗でもそのエリアの市場をほぼカバーできてしまうこともあります。その場合、新たな店舗を出店するためには、異なるエリアを選ばざるを得なくなるでしょう。
したがって、店舗展開を前提とするなら、人口がそれなりに多い都心または地方都市を選ぶべきです。このようにして、将来の展開に余地を持たせることが可能となります。
もし将来の展開について決定していない場合は、複数店舗展開の可能性を考慮した立地選択が賢明です。始めから複数店舗展開を前提に考えておくと、一店舗だけで終わる選択も後から自由にできますが、逆に最初から一店舗のみと決めてしまうと、後から展開を広げたいと思った時に立地やその他の条件で不利になる可能性があります。
なのでもし、決めかねているという場合に関してはどちらの選択も可能な選択肢を保持しておくことが重要です。店舗展開を前提に動くことで、将来的に柔軟に対応できる準備ができますので。
まとめ
地方と都市のメリットは存在し、自分がどのようなビジネス形態や方向性を持つかによって、最適な判断は変わってきます。一人で運営する予定があるのか、複数店舗を展開するのか、スタッフを雇うかどうか、現在どこで働いているのかといった要素が重要です。
これらの点を整理し、自身の状況に合わせた選択を広げていくことが、開業地選びの出発点になります。
今日は、「美容室を開業する際、地方か都心か」というテーマで話を進めてきましたが、最終的には各自の事情や目指すビジネスモデルによって最適な選択肢が異なることが理解いただけたかと思います。自分自身の現在地点と将来像を明確にし、それに基づいて地点選びを進めることが重要です。
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