業務委託サロンに転職するべきか、正社員サロンに転職するべきか悩んでいる方も多いかと思います。また、独立時や今後の方向性で雇用形態の戦略をどうするかも非常に大きなテーマになります。今回は業務委託サロンてどうなのか?良いのか悪いのか、その辺りのお話をしていきます。
業務委託は悪ではない
私自身、独立するまでに1社目は通常の教育サロンと呼ばれる正社員雇用のサロンにいました。2社目は転職して業務委託の美容室に行きました。なので両方の形態のサロンで働いてみて、業務委託がどうなのかというところは理解しているつもりです。
業務委託のサロンについて、良くないと言う意見もありますが、今日の話の結論としては業務委託が悪いわけではないと考えます。
デメリット
もはや。正社員なのか業務委託なのかというジャンル分け自体が間違っているとも思います。良くないのは、業務委託のデメリットを理解せずに業務委託サロンで働いてしまい、それに気づかずに続けてしまうことです。
また、デメリットが人によって本当に影響を与えることもあれば、特に問題にならないこともあります。ライフスタイルや性格によっても合う合わないがあります。まず、そのデメリットについてお話ししたいと思います。
保証
ご存知の通り、保証がないというところが大きなデメリットです。社会保険に加入するスタイルではないので、怪我をした時に収入を補完してくれるものがあるかと言うと、外部の保険をかければカバーできるものの、正社員が受けられるような保証はありません。
もう一つ、将来の保証です。業務委託の場合、基本的に厚生年金ではなく国民年金になります。そのため、受け取る年金の金額はかなり少なくなってしまいます。
この問題も年金が今後どうなると予測するのかでも問題かそうでないか考えは分かれますが、もらえる年齢が後になったり、受け取れる金額がどうなるかは不確定なのは確かです。
保険に関しては、会社側が負担している分もあり、かけている金額は自分が出している分よりも大きくなりますので、何かあった時の補償は確かに手厚くなります。
このように、正社員であれば保証を受けられますが、その分の負担もあることを忘れてはなりませんが、その分を貯めて運用した方が良いという考え方もあります。
ここで重要なのは、貯金ができるか、しっかり必要な分を置いて資産運用ができるかどうかです。性格によってもそれがデメリットになるのか、特に関係ないのかは大きく分かれてくるのではないでしょうか。
責任の所在
次のデメリットは責任の所在です。これは会社によりますが、お客様とトラブルになった時に一部の業務委託サロンでは、その責任が美容師個人にあります。つまり、スタッフ自身がその対応をしなければならないケースもあります。
もし、裁判になったり損害賠償が発生した場合、その責任を個人で負わなければならないこともあります。これは、個人事業主として当然かもしれませんが、そういったケースもあります。
ただし、お店によって対応は異なります。業務委託契約であっても、お店の中で起きたことに関して会社が全面的にバックアップする場合もあります。ここは会社のやり方次第で変わるので、業務委託だからと一概には言えないポイントでもあります。
融資
3つ目のデメリットは融資です。業務委託の場合、基本的に確定申告を行います。お店から受け取った報酬が売上となり、そこから経費を差し引いて残った分が自分の収入となります。
ここで、節税のために経費を多く計上し、報酬を少なく見せることもよくあります。税金は売上ではなく、最終的に残った利益、つまり自分の報酬にかかるためです。
しかし、収入が少ないと見せ続けると、車のローンや家のローンが通らない、独立時の融資が下りないなどの問題が発生します。
また、同じ収入額でも、企業に勤務している人と個人事業主では、ローンの通りやすさが異なります。これもデメリットの一つです。
デメリットをまとめると、まず、保証です。怪我や病気など何かあった時の保証が薄くなること。次に、責任の所在です。お客様とトラブルになった時に、個人で責任を取るのかお店が取るのかはお店によって異なります。そして、確定申告のやり方によってはローンが通りにくくなったり、融資が下りにくくなったりします。同じ収入でも、上場企業の社員という会社の看板があるかどうかでローンの通り方が変わってきます。これらがデメリットとして考えられます。
メリット
手取り
一方で、もちろんメリットもあります。手取り部分が圧倒的に多くなります。正社員だと給料から天引きされる社会保険の支払いがないため、その分手取りが増えます。確定申告の仕方によっては支払う税金も安くなるので、手取りも高くなり、手残りの分も多くなります。
また、インボイスが始まる前は消費税の関係でさらに手取りが多くなっていました。インボイスに関しては会社によって対応が変わるため、メリットになるかどうかは異なりますが、消費税の分を抜いても手取りは大きくなります。
自由度
もう一つのメリットは自由度です。多くの業務委託サロンでは、基本的に出勤時間の縛りがありません。ただし、お店によっては何時から何時までと決まっている業務委託サロンもあったり、本当に自由なサロンもあります。合法かどうかという話は今日はしませんが、自由度は基本的に正社員サロンよりも高いです。
業務委託に行くと、金銭的なメリットや自由度が正社員サロンよりも大きくなるので、これが良いと感じる人には向いているでしょう。
選び方
デメリットとメリットを比較して、自分にはどちらが合うのかを考えることが重要です。業務委託と言っても本当に様々です。ただ契約が業務委託なだけで、中身は正社員サロンのように会社が全面バックアップしてくれるところもあれば、ガッツリ個人事業主の集まりのようなサロンもあります。社風を見ながら選ぶことが大きな基準になります。
インボイスの対応
インボイスの対応についてですが、まずインボイスの登録をするかしないかという点です。個人事業主で業務委託契約をしている方は、自分でインボイス登録をして消費税を納めるスタイルを取っている会社もありますし、インボイス登録をしなくても良く、会社側で消費税を納めるというところもあります。
インボイス登録をするかしないかと、それに伴う報酬率がどうなるかという点も考慮する必要があります。
報酬以外の魅力は
報酬以外の基準も選ぶポイントとして重要です。報酬率には限界がありますが、他の魅力は会社によって異なります。社風も様々で、みんなで協力して楽しく働く業務委託もあれば、個々で動くスタイルのサロンもあります。どちらが良いかは人それぞれです。協力して何かを成し遂げたい人もいれば、個人で責任を持って仕事をしたい人もいます。これは良し悪しではなく、合う合わないの問題です。
まずインボイスの対応や報酬率、その内容を確認し、その後に報酬面以外の魅力を考えることが、業務委託で転職を考える際のポイントになると思います。
業務委託の美容室を経営するのは?
一転して業務委託サロンを経営する立場で考えると、無策で業務委託の形態で広げていくのは危険だと考えています。インボイスにより以前よりも経営的なメリットが少なくなっています。
今まで消費税の分の関係で高い報酬率を保てましたが、インボイスによりそのメリットを強く押し出せなくなりました。
大手の業務委託サロンや資金力のあるサロン、経費を抑えて高い利益体質を持つビジネスモデルのサロンであれば、インボイスの登録をせずに高報酬率を提供できるところもあります。
そのようなサロンとどう戦うのか?業務委託を選ぶ方は手取りを非常に重視するため、その部分で負けると、どれだけ良い環境を提供しても厳しい戦いが予想されます。
一方で、今いるスタッフの選択肢として業務委託を導入するのは、スタッフが望むのであれば選択肢の一つとして考える価値はあるかとも考えています。
考えなくてはならないポイントとして、業務委託を希望する方とそうでない方のどちらが自社に合っているかです。実は、弊社も業務委託でスタートしましたが、現在は正社員のみで運営しています。
この理由の一つには、正社員を希望する方の方が長く残ってくれる、または正社員を希望する方の方が当社の仕組みで伸びる方が多いという傾向がありました。
このような理由から、どちらを希望する属性の方が合っているのかを見極めて、業務委託を導入するかしないかの決断をするのは一つの方法です。
まとめ
業務委託についてお話してきましたが、オーナーさんも美容師さんも共通してお伝えしたいのは、業務委託が悪いというわけではないということです。業務委託サロンの中にも素晴らしいサロンもあれば、そうでないサロンもあります。正社員サロンの中でも同様です。また、自分に合うかどうかも重要な要素です。
正社員から業務委託に切り替えようかと考える時には、デメリットをしっかり理解し、それが自分にとってどれくらいの影響を持つのかを考えた上で決めることが大切です。デメリットが大きいと感じるなら正社員の雇用形態を選べばいいし、それでも良いと感じるなら業務委託も選択肢になります。どちらも否定する必要はなく、どちらが良いというわけでもありません。