美容室開業 経営 |必要な自己資金はいくら?融資を成功させるための準備を解説。

美容室を開業する際に必要な資金は自己資金と融資で準備するのが一般的です。自己資金はいくらあればいいのか。失敗しないためにできる準備は?創業融資を成功させるためには1日2日ではなく、長期的に取り組む必要があります。今回は独立を決めたらすぐにでもとりかかっていただきたい項目を解説しますので是非最後までご覧ください。

美容室開業にかかる費用の目安

美容室を開業するのに必要な資金の総額は、どれくらいかかるのでしょうか。この点についてですが、どのような広さの物件を借りるのか、どのエリアで借りるのか、立地条件等で物件の契約にかかる金額でも大きく変わります。また、内外装の工事をどれくらい作り込むかによっても費用は大きく変動し様々な状況がありますので、一概には言えません。

しかし、一人で2席程度、シャンプー台1台の小規模な美容室を開業しようと思った場合、物件取得費用や内装費用、設備や備品の購入も含めて、おそらく800万から1000万少しが妥当な金額でしょう。

居抜き物件で、美容室で元々の内装を利用する場合等は、物件取得費用にもよりますが導入する設備や機材も通常より圧倒的に少なくなるので200万から300万でも可能なこともあります。運良く良い物件が見つかれば、居抜きで安く抑えながら開業することもできます。

また、スタッフを雇用し、6席程度の店舗を作る場合、内装をしっかりと作り込む必要があります。集客の面を考慮しスタッフに選んでいただくためには、店舗の内装レベルも重要な選択理由の一つとなり手を抜くことはできません。現在、材料費の高騰もあり、5〜6年前に比べて平均約20%ほどの値上がりが見られます。以前は1000万で作れた物件も、内容は変えなくても現在では1200万程度の費用がかかるかもしれません。

私たちが6席の店舗を作る場合、物件取得費や内装費を含め、約1200万円〜1600万程度の費用がかかっています。実際には、初期投資で1000万から1300万円程度は必要になると考えられます。さらに加えて、広告宣伝費やその他の運転資金も必要になります。

もちろん、内装を抑えることや物件の状態によっては、費用を抑えることも可能です。しかし、一般的には上述の金額が目安となるでしょう。なお、一部の美容室では開業時に5000万円から6000万円以上もの投資を行っているケースもありますが、この規模での開業は大きな担保や相当な自己資金がない限り、それは現実的ではないかと思います。

融資を成功させるための自己資金の目安、相場は?

目安の金額

さて、上記の金額を準備し、融資を成功させるためにはまず、自己資金の準備が必要になります。自己資金が0円の状況で、「お金を貸してください」と申し出ても、なかなか融資は受けられません。

必要な自己資金の額ですが、ざっくりとした目安としては、希望の金額の約3分の1を持っていることが一つのボーダーラインです。例えば、1000万円を借りたい場合は、300万円程度の自己資金があるイメージ。インターネットで条件を検索すると、1/10程度で良いとされていることもありますが、それは融資の「申し込み」が可能な金額であり、実際に融資が受けられる金額ではありません。

現実的には、300万円の自己資金に加えて1000万円の借り入れが、開業時において最もオーソドックスなパターンと言えるでしょう。もちろん、100万円だけの自己資金で1000万融資を受けた方や、300万円の自己資金で1800万円を借りた例も実際にはありますのでこれらはあくまで一つの目安として捉えていただき、具体的な状況に応じて計画を立てることが重要です。

資金を貯めるおすすめの方法

資金を貯める方法についても重要なポイントがありますので紹介します。申し込み直前に突然300万円を口座に入金することは、評価されにくいです。例えば、親御さんからお借りしてその金額を1ヶ月前になって通帳に「ポコン」と入れた場合、金融機関は計画性を非常に重視するため、不利になることがあります。

急に現れた300万円を説明できるなら問題ありません。例えば、「別の口座で貯金しており、それを移しただけです」と説明し、その口座の記録を提示し流れを説明できれば良いのですが、それが難しい場合もあります。親からの金銭援助を正直に話してしまうと、「具体的にどのような計画を持って進めてきたのか」と問われる可能性があります。

また、「タンス貯金」も通用しません。基本的には、数年かけて定額をコツコツ貯めていく方法がオーソドックスです。1年程度の期間をかけて貯金することが望ましいとされており、月に20万円ずつなどの計画的な貯蓄が現実的です。

実際に、必要な300万円のうち200万円を自己努力で貯め、残りの100万円を親御さんから援助してもらうというケースでも通る事がありますので、計画的に貯めてきた+援助はあり得る範囲です。

美容師になりたての方や、今から数年後に独立を考えている方は、急に資金を準備しようとするのは避け1万円や5000円でも良いので、定期的に積み立てる貯金を続けることが、信用を積み重ねる上で非常に効果的です。

長期間にわたって計画的に貯蓄を行ってきたという実績は、非常に大切です。ただし、自己資金の金額にもよりますが、それだけで融資が受けられるわけではありません。

融資を受けるまでに気をつけたい項目

支払いの遅延

融資を受けるためには注意すべき重要な点があります。まず、信用情報に傷をつけないことが重要です。信用情報とは、ローンやクレジットカードの支払い遅延の有無などが記録されるもので、この情報は一覧として自分でも確認可能です。

CICなどの機関に行けば、自分の信用情報を確認することができますので気になる方は活用してみて下さい。この情報は約5年間記録され続け、一度傷が付くと消えるまでに時間がかかりますので、注意が必要です。

よくあるケースとしては、転職により給料の振込口座が変わったにも関わらず、クレジットカードの引き落とし口座の変更を忘れてしまい、支払いが遅延してしまうことです。

このような問題を避けるためにも、資金移動を忘れないようにすること。可能であれば、お給料の振込口座とクレジットカードの引き落とし口座も変更し同じにしておくなど、事前に対策を講じておくことをお勧めします。

フリーランス、業務委託の場合

フリーランスや個人事業主として美容師をされている方々にも注意していただきたい点があります。正社員サロンから業務委託やフリーランスに転じて自分の店をオープンするケースがありますが、特に確定申告には気をつける必要があります。

税金を少なくしようとして経費を多く計上し、収入を少なく見せがちですが、その場合、「貯金はどうやって作ったのか?」と疑問が生じることがあります。

また、「収入がないと見られると返済能力がない」と判断されることもあります。ある専門家の方の意見では、確定申告では収入を200万円近くは出しておくようにとのことでした。

確かに税金を払うのはもったいないと感じることもあるでしょうが、融資が失敗してしまうよりは、適切な税金を払う方が遥かにマシだと考えられます。確定申告をする際には、払う税金を必要経費とみなし、適切に処理することが推奨されます。

キャッシング

キャッシングについても注意が必要です。クレジットカードでお金を借りることができるキャッシングですが、その利用履歴も記録されます。キャッシング自体が直接的な問題を引き起こすわけではありませんが、キャッシングした金額の返済が遅れた場合は、信用情報に大きな傷がつきます。

金融機関から見ると、キャッシングを利用することで、「この人は日常的にお金を借りる必要があるのか」という印象を持たれることがあり、資金繰りの能力に疑問を持たれることがあります。したがって、キャッシングはできるだけ避けるべきであり、なるべく利用しないようにするのが理想です。

創業融資を受けられる金融機関は?

金融機関について少し触れたいと思います。美容室開業の際、主に利用されるのは銀行や国が運営する「国の金融機関」、通称「国金」や「公庫」と呼ばれる日本政策金融公庫が最もメインで、基本的にはここに融資の相談に行くことになります。それに加えて銀行からの融資を受けるケースも多くあります。

ただし、銀行にはいくつか種類があり、メガバンク、地方銀行、信用金庫などがあります。それぞれに特徴や役割的なものがあり、メガバンクから美容師さんが創業融資を受けることはほぼ不可能と考えて間違いありません。

なので、開業予定の地域にある信用金庫や地方銀行に行くことになるのですが、中には、創業融資を行っているところもありますが、行っていないところもあるため、事前に調べることが重要です。

例えば、大阪には「池田泉州銀行」のような地方銀行があり、創業融資を利用できることがあります。私は池田泉州銀行さんにお世話になりました。また、「大阪信用金庫」や「大阪シティ銀行」も創業融資を募集しているようです。

これらの信用組合や信用金庫は、小回りが利きやすく、特に小規模企業へのサポートが手厚いことが特徴です。

美容師として創業する際は、一般的に信用金庫や創業融資のある地方銀行を中心に検討し、具体的な相談を進めるのが良いでしょう。

金融機関の方とお話しする段階になった時、一つ注意して頂きたいことがあります。「資金調達」とい言葉をよく聞くと思いますが、担当さんの前では調達とは言わないようにして下さい。

金融機関さんの立場からはあまりいい印象を与えない言葉になりますので。

保証協会って何?

融資を受ける際には、初めての場合、保証協会を利用することが一般的です。銀行からお金を借りる際に、保証協会が背後で支援してくれます。何か問題が発生した場合、保証協会が金融機関に代わって支払いを行うため、金融機関にとってはリスクが低くなります。そのため、融資を受けやすくなります。

創業の段階で、保証協会なしで融資を受けることは、実際には非常に難しく、ほぼ不可能と考えてください。保証協会を利用すると、金融機関にとってはリスクがないため、融資に対してどちらかというと見方寄りな立場をとって下さいます。金融機関のイメージは厳しいものがありますが、実際には計画に不足があれば協力してくださり、計画書の作成をある程度ですがサポートしてくれることもあります。

それなら保証協会付きの融資の方がいいのでは?となりそうですが、保証協会を利用すると、保証料が発生します。この保証料は保証協会の収入となるため、金利と合わせて支払う必要があります。

また、保証協会の利用には枠が設定されており、一定額までしか保証を受けられません。創業時はこの枠について考える必要はありませんが、事業を拡大していくと、いずれは保証なし無担保の借入、いわゆるプロパー融資に移行する計画を立てる必要が出てきます。信用を積み重ねて、長期的には保証なしでの融資を受けられるよう体制を整えステップアップを目指していくことが重要です。

融資を受けるリスクとは?

融資のリスクについての感覚で、独立開業を反対されるケースもあるかもしれません。特に自営業の背景があれば理解が得られやすいですが、周りの方が事業を経験していない環境では、借金に対するネガティブなイメージを持つ人も多く、「借金して失敗したらどうするの?」という反対意見に直面することがあるかもしれません。

借金には抵抗を感じる方もいますが、事業に使う融資と個人的な消費のための借金は性質が異なります。

負債と資産の概念を考えると、資産は持っているものを増やすもの、負債は減らすものと定義されます。例えば、将来価値が上がるところに家を建てたり、物件を購入する場合は資産になり得ますが、価値が下がるところに立てる家や物件を購入すると負債になります。

事業の融資を受けて店を開き、利益が出て事業が軌道に乗れば、資産が増えていきます。一つの考え方として事業に使う借金は資産であるとも言えます。

そして融資を返済する過程で築かれる信用は、将来的に次の資産を生み出すための重要な要素になるのは間違いありません。

融資を受ける理由としては、安全性と時間を購入することが挙げられます。創業融資では、自己資金を貯める時間を短縮し、早期に事業を開始することができます。もし自分で1000万の貯蓄をし、全ての資金を用意するとすれば一体そのくらいの期間が必要か。

なるべく早く独立し、経験を詰んだ方が人生軸で考えても大きなメリットがありますので利息は一定のリスクは必要経費と考えてもいいのではないでしょうか。

また、住宅ローンのように、多額の借金を背負うことが一般的に受け入れられている現状を考えると、1000万程度の借金にそこまでの抵抗を感じる必要もないのかと。

経営者としてのスキルは、実際に経営を始めてみないと学べないことが多くあります。経験を積むことは、人生において重要な安全ラインを守る手段となるため、リスクを恐れずに借入をして早期に事業を始めることのメリットは大きいと考えられます。

融資は総合評価

融資は総合評価で決定されます。お金の有無だけでなく、事業計画や経験値、現在の能力などが総合的に考慮されるため、審査が通るかどうかはこれらの要素によって変わります。

自己資金は必要な要素の一つですが、それだけで融資が通るわけではありませんし、自己資金が少ないからといって可能性がゼロというもありません。重要なのは事業計画や、特に美容室を開業する場合には美容師としての経験値が大きく影響するという事。

経験のない人が美容室を開業しようとしても、自己資金がしっかりあっても融資を受けにくいことがあります。美容師としての経験に加えて、店舗運営や管理の経験があると、より有利になります。

たとえば、過去に複数の店舗の立ち上げ経験がある人や、店舗の広告運用や新規顧客獲得の実績を持つ人、求人の担当をしていて採用の知識はある、そういった方は融資を受けやすくなるといったイメージです。

経験は単に融資を受けるためだけではなく、独立後の経営においても非常に役立つノウハウを提供してくれます。そのため、現在雇用の環境下で仕事されていて、経営に関わる経験を積むチャンス、店舗の立ち上げや広告業務等を任される機会がある場合は、積極的に、たとえ無給であったとしても独立する前に挑戦することをおすすめします。

どこかに不安な材料がある場合、別の部分で保管し面談の際に伝えられる要件を揃えていく事も大切です。

独立するべきタイミングについては、売上げの状況よりも、融資を受けられる準備が整った時最速の時期を基準にするのが良いと考えます。開業を決意している方にとっては、準備が整ったら迅速に行動に移すことが推奨されます。

まとめ

融資の失敗は開業を大きく後退させる要因になります。安心して自信を持って進められるように、各種の準備をしっかりとやっていきたい所です。

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